いよいよzineの最後の内容となります。ここまでお読みいただいた方ありがとうございます!
僕の振り返りのために始めたZineですが、これを読む方誰でも重なるところがあると思いブログ形式で投稿しています。
ここからまたいろいろ始まると嬉しいです。
では最後のZineをどうぞ。
井上先生
おばあちゃんと出会ってから地域の活動に力を入れた。看護師として病院から訪問看護へ転職してより地域に根差した看護師として活躍を目指した。
ある日茅ヶ崎でお世話になっているコミュニティでライターさんと話す機会があり、偶然ぼくの母校・小出小学校の先生の話題になった。茅ヶ崎のフリーペーパーでインタビュー記事に登場していた井上先生。ぼくが祖父を亡くしたときの担任の先生だった
修学旅行前日に祖父が亡くなり、旅行に出るのか、大切な人の傍にいるのか選択肢があった。だが迷うことなく、ぼくは後者を選んだ。
葬儀を終えて学校に戻った日、作文の授業があった。 クラスメイトはみんな、修学旅行の思い出を綴っていた。 けれどぼくには、その思い出はなかった。
担任の井上先生に「何を書けばいいですか?」と聞いたら、こう言われた。
「おじいちゃんとの思い出を書いてみたらどう?」
「わかりました」
と返事をして作文用紙に向かったけれど、ペンが進まない。 次第に涙があふれて、教室の中なのに嗚咽が止まらなかった。 作文用紙が涙で濡れていくのを見ながら、必死で祖父との時間を綴った。
あのときの気持ちを、今でもはっきりと覚えている。
そしてその作文をめぐる出来事には、続きがある。
成人式で井上先生に再会したとき、先生はこう言った。
「元希に謝らなきゃいけないことがある。作文、書かせてしまってごめんね。」
不意の謝罪に戸惑いながら、でもぼくはこう返した。
「先生、気にしないでください。先生のおかげで今の自分があるので。」
その言葉は本心だった。 祖父との思い出に向き合うことができたから、今の自分がある。
フリーペーパーのインタビュー記事には、先生はいま、母校の特別支援学級の担任をしていて、そのクラス名が「むくろじ級」だと書かれていた。
「むくろじ」は小出小学校のシンボルツリーであり、「無患子(むくろじ)」という漢字が示す通り、“子どもの患いを無くす”という意味がある。 昔はその実をお守りにしたり、石けん代わりに使ったりしていた、まさに“癒し”の象徴のような木。
そのことを知ったとき、ぼくの中で“むくろじ”という言葉が大きく根を張りはじめた。
そしてぼくは、いま「Muku」という名前で活動している。 まちの健康、心の安心、人と人のつながり―― そういった”まちの自然治癒力”を高めていくような取り組みを、小さくても根気よく続けている。
Mukuは、むくろじの木のような存在になりたい。 自分の根っこを大切にしながら、誰かの暮らしのそばに静かに立ち、影を落とし、癒しを届ける。
それが、ぼくにとっての“看護”であり、“生き方”そのものだ。
Mukuという木の名前には、そんな願いと祈りが込められている。
げんき
「GEN.」というタイトルは、ぼくの名前「元希(げんき)」からきている。
けれど、それはただの語呂合わせではない。 祖父の死、心を揺さぶられた病院での体験、そして小出という土地にもう一度戻ろうと決めた瞬間── それらの“はじまり”が今の自分を育てている。
「GEN.」には、英語で「根源」「起源」「原点」といった意味もある。 このZINEは、ぼくの原体験を見つめ、人生の“源”を掘り起こすような作業だった。
それと同時に、手にとった誰かにとっても、 「自分のGEN.はなんだろう?」と問いかけるきっかけになればいいと思っている。
みんな、何かの「はじまり」を持っている。 大切な人との思い出、忘れられない言葉、傷ついた出来事、温もり。
それを思い出すことは、ちょっとだけ自分を立ち返らせてくれる。 迷ったときに、自分の道を指し示してくれる。
このZINEが、そんな“GEN.”を見つけ直すような時間になってくれたら嬉しい。
あとがき
実は思うように動けなくなったときがありました。 気がつけば、心も身体も、何かに追いつこうとしすぎて、とうとう燃え尽きていました。 うつ病と診断されてから、はじめて立ち止まって、 後ろを振り返る時間ができました。
その時見えてきたのは、自分がどれほど多くの人や環境に支えられていたか、ということでした。 見守ってくれる誰か、そっと手を貸してくれた人、思い出の風景や、日々の積み重ね。 それはどれも、“ひとり”では気づけなかった栄養でした。
「Muku」という活動は、そうした無数の支えによって芽吹いた木のようなものです。 そして、「Muku」が誰かの「支え」や「種」になれたらと願っています。
このZINEを手に取ってくれたあなたにも、 振り返った先にある“やさしい景色”が届きますように。 あなたの中にある木が、静かに、そしてしなやかに育ちますように。
最後に
このブログ、MukuLogは僕がなんでこんな活動をしているのかや皆さんにとって地域で暮らしながらげんきに自然となれるきっかけとして書いています。
このZineもそんな想いから僕の看護の原点を書いた内容です。僕以外にも重なる人がいるかもなのでぜひカフェやバーもやっているのでその時にはお話に来てください。
ぜひお待ちしています。